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ダウンタウンのヴァイオリン教室第65回 ミュージック オヴ ザ ハート(1999年)
原題 Music of the Heart(心のよりどころとしての音楽)
見どころ: 1970年代末からニューヨーク市イーストハーレムの基礎学校(小学校)で子どもたちのためにヴァイオリン教室を指導したヴァイオリニスト、ロベルタ・ガスパーリ・ツァラヴァス。彼女と教え子たちの努力の実話にもとづく物語の映像作品。貧困や家庭問題、偏見や公教育・教育行政の貧困などの困難を乗り越えて、ヴァイオリン教室を運営した人びとの努力と心意気を描く傑作。
1 夫に捨てられて
ロベルタ・ガスパーリは、海軍少尉の夫、チャールズ・ディミトロスが同僚の妻と不倫して家を出ていってしまったため、2人の息子を連れて母親が住む田舎町に引っ越した。自分の捨てた夫への思いを断ち切れず、悲嘆にくれるロベルタ。
チャールズがいる家族の思い出の写真を眺めて、嘆息する。
引越し荷物を乗せたトラックが到着し、家具や生活用品を降ろし始めた。だが、運送業者が大きな木箱の荷物を落としてしまった。蓋が開いて、中身が道路に飛び出した。ケイスに入ったたくさんのヴァイオリン。楽器店を開けるくらいにある。
ヴァイオリンの台数に母親が驚いた。ロベルタは、大切なヴァイオリンを落とした業者を罵倒する。
翌朝、悲嘆にくれる娘を励ます母親は言った。
「とにかく、まず仕事を探さなくっちゃね。子どもは食べざかり。私の収入だけじゃあ養っていけないわ」
で、ロベルタが見つけた仕事は、ギフトショップの包装係。包装とリボンかけに追われる毎日。
そこにやって来たのが、幼なじみのブライアン・ターナー。仕事は、作家=ジャーナリスト。最近本を出版したという。
「まあ、この町にいるの?」と尋ねた。
「今は、母親の誕生日で帰って来てるんだ。この贈り物は、母親の誕生祝いさ」という返事。
「あら、親孝行なのね」
というわけで、仕事の休憩時間にブライアンとカフェに行った。互いに近況報告。ブライアンは、ロベルタが浮気っぽい夫と別居したのを知った。そして、ロベルタが「もっといい仕事」を探していることも。
ブライアンは、ロベルタがヴァイオリンの名手であることを覚えていた。
「君は今頃、カーネギーホ−ルにいるのかと思っていたよ」と言った。
「才能に目覚めるのが遅すぎたわ。それで、ヴァイオリンの指導資格を取ったわ。教室を運営したこともあるの」とロベルタ。
「それじゃあ、以前ぼくが取材した小学校の名物校長の女性を紹介しようか。会いにいってみたら?」
というわけで、ロベルタはニューヨークのイーストハーレムのエレメンタリースクールの女性校長に会いに出かけた。
2 ジャネットとの出会い
セントラルパーク・イースト小学校の校長、ジャネット・ウィリアムは、見るからに聡明そうな黒人女性。彼女は、ブライアンの紹介ということでロベルタとの面接に応じることになった。
ジャネットはロベルタが提出した履歴書を見ながら、いくつか質問した。主にロベルタのヴァイオリン指導者・教育者としてのキャリアについて。
ロベルタは10年以上前に、夫チャールズの赴任地ハワイで合唱団を指導した。そのあとはブランクで、10年後にこれまたチャールズの赴任地ギリシアでヴァイオリン教室を指導した。多くの生徒を集めるつもりで張り切ったが、半年後にチャールズはまた転任することになってしまった。
というわけで、ロベルタとしては、さしたる指導キャリアはない。
「音楽指導者としての経験はそれだけですか」とジャネットは問いかけた。
ロベルタは答えた。
「履歴書には書いてありませんが、2人の男の子を4年以上教えていますの。…私の息子たちなんですが。2人ともすばらしい成果を達成しましたのよ」
だが、ジャネットは、家庭内で自分の子どもにヴァイオリンを教えているというのでは、キャリアにならないと考えた。そこで、公的な場での教育歴として見るべき経験がないものと判断した。
というわけで、ロベルタの採用を見送った。
だが、それからしばらくして…。
ジャネットは、音楽担当教務主任のデニス・ラウシュと年間教育計画について打ち合わせをしていた。
そこに、ロベルタが2人の息子たちを従えて現れた。長男が7歳のニック、次男が5歳のレクシー。ロベルタは、校長室への取り次ぎを断る秘書の制止を強引に突破して、校長室に押しかけた。
品が良くて可愛い男の子たちが、愛想を振りまきながら校長室に入って来た。ジャネットは笑顔で応じた、そのすきにロベルタは2人に息子をジャネットの正面に並ばせて、ヴァイオリンの三重奏を始めた。
主旋律をニックが、装飾部高音をロベルタが、低音部をレクシーが担当、じつにみごとなハーモニーを奏でた。思わず聞き惚れるジャネット。年少の子どもたちにこのレヴェルまで指導したのか、と感心した。
で、2人に年齢を聞いた。ニックは7歳で、3歳から訓練を受けてきた、と答えた。レクシーは5歳で、3歳半から、と答えた。ついでに、「ママを雇ってもらますか」と愛嬌たっぷりに尋ねた。いやあ、この子どもたちは、演技力とマーケティング・センス抜群である。
「この学校の子どもたちも、これくらいまで上達すればいいだけれど…」と嘆息。
割って入ったラウシュ。
「まあ、無理だね、うちの児童では。音階をド、レ、ミとやってファまでいったら、お慰めだ」
「いえ、どんな子どもでも、これくらいには上達しますわ。私が教えれば」
母子の説得力に屈したジャネットは、必修課目の外コース(ただし、課程単位として認定する)の臨時教員としてロベルタを採用することにした。だが、新たなコースが突然追加されたことで、ラウシュは年間教育計画を練り直さなければならなくなった。で、
「この段階で、カリキュラムに追加されても、対応できません」と不満をぶつけた。だが、校長の判断は下りてしまった。
とはいえ、「ヴァイオリンの調達(費用)はどうするんです。いまからじゃあ、今年度は間に合いませんよ」とラウシュ。
「大丈夫よ、私が持っているヴァイオリンを使ってもらいます。教室用にとギリシアで50台買ってありますの」
というわけで、イーストハーレム地区の小学校で、ユニークなヴァイオリン教室が始まることになった。
3 ロベルタのチャレンジ
ニューヨークでのロベルタとニック、レクシーの新生活が始まった。ロベルタにとっては、ヴァイオリン教室をはじめとして、自立を志向する女性としての新たな経験、試行錯誤が待っていた。
■ブライアンとの恋愛■
ところで、当面、ロベルタ母子にニューヨークでの住居を提供したのはブライアンだった。自宅に彼女らをいっしょに住まわせたのだ。ブライアンは独り暮らしだったし、取材や調査でしょちゅう家を空けていたので、あまり支障がなかったからだ。
ブライアンは、少年時代からロベルタに憧れていたことをロベルタに告げた。今でも好きだと。恋心を打ち明けられたロベルタは、まだチャールズとは正式に離婚していないということを理由に、ブライアンの求愛を拒んだ。だが、夫に捨てられた寂しさもあって、ついにブライアンと性交渉を持つようになった。
しかし、ブライアンは自由恋愛主義者でボヘミアンだったので、この恋愛関係は結婚にまでいきつくあてはなさそうだった。
■前途多難なヴァイオリン教室■
イーストハーレム小学校での課外ヴァイオリン教室は、ロベルタ
http://blog.goo.ne.jp/weltstadt_16c/e/f34ecc35ee41835c057ef800c66ee6e3